レファレンス件数の多い事例としては、人物や系図に関するものがあります。
有名人はもちろん、市井の人の生きた証を、資料の中にたどるのです。古い電話帳や住宅地図、名鑑や同窓会名簿など、資料の森に奥深く、入って行くのです。
【問】大正八年に三十歳で夭折した(福島市)瀬上町の歌人門間春雄について
- 家は醤油製造業であったが、その醤油の名称と製造されていた年代
- お父さんが町長をしていた期間
- 血筋の方が現在瀬上町に存在するかどうか
- その他門間春雄に関する資料・情報について知りたい
このような調査依頼文が、研究者から届く。さて、どこから調べていくか。まずは当館にも所蔵している、岩波書店(昭和六年)発行の遺稿『門間春雄歌集』を見る。序文は、齋藤茂吉が寄せている。年譜をたどり、事実関係を確認していく。書庫の産業部門の、大正期からの商工名鑑のようなもの、歴史的分野の実業家・資産家・地主総覧の類、古い電話帳など、手当たり次第見ていく。すると、確かに名前は出てきて、かなり手広く事業を展開させていた形跡はあるのだが、《醤油の名称》がわからない。それでもしつこくページをめくっていくと、見つけた!『東北醸造家銘鑑』(大正十三年刊)に、銘柄の写真まで載って【門間醤油店】が紹介されていた。「図書館の資料の蓄積ってすごい。」と、感激する一瞬でもある。「手当たり次第に」と言ったが、資料が体系化されて使いやすく整理されているからこそ調査もはかどるのである。
「2.お父さんが町長をしていた期間」は、『福島市史』第十三巻に歴代の市町村長名が掲載されており解決。
「4.その他門間春雄に関する資料・情報について知りたい」は、同じく『福島市史』第五巻等に、正木不如丘らと東北文芸協会を組織したことなどの記述があること。また、妹の丹治千惠の著書二冊と、長男の門間敏昭の著書一冊を当館で所蔵しており、その中に、春雄について書かれている部分があることをお知らせした。「3.血筋の方が現在瀬上町に存在するかどうか」については、関係者の存在を確認した。
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レファレンスは、資料をもって回答するということが原則ではありますが、「人とのつながりも大切にしなければ」と、感じております。
[資料情報サービス部]