二〇〇四(平成十六)年八月六日発行
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八月六日から十月六日まで、当館展示コーナーでは「野口英世展 新千円札発行を記念して」を開催しております。これにちなみ、母シカの手紙と、英世が上京する時の刻文をご紹介いたします。
母の手紙は、英世の帰国をうながすもので、下手であっても一所懸命書いた文面に、、子を思う母の気持ちが強く表れています。
明治四十五年一月二十三日付、今に残る母からの唯一の手紙です。
おまイのしせ(出世)にわ。みなたまけました。わたくしもよろこんでをりまする。なかた(中田)のかんのんさまに。さまに。ねんよこもり(毎年 夜籠り)をいたしました。べん京(勉強)なぼでもきりかない。いボし《注1》ほわこまりおりますか。おまいか。きたならば。もしわけ(申訳)かてきましよ。《注2》はるになるト。みなほかいド(北海道)に。いてしまいます。わたしも、こころぼそくありまする。ドかはやく。きてくだされ。かね(金)を。もろ(貰)たこトたれにも きかせません。それをきかせるト。みなのれ(皆飲まれ)てしまいます。はやくきてくたされ。はやくきてくたされ。はやくきてくたされ。はやくきてくたされ。いしよ(一生)のたのみて。ありまする。にし(西)さむいてわ。おか(拝)み。ひかし(東)さむいてわおかみ。しております。きた(北)さむいてわ おかみおります。みなみ(南)さたむいては おかんておりまする。ついたち(朔日)にわ しをたち(塩断)をしております。ゐ少さまに。《注3》ついたちにわ。おかん(拝む)てもろておりまする。なにおわすれても。これわすれません。さしん(写真)おみるト。いただいておりまする。はやくきてくたされ。いつくるト。おせ(教え)てくたされ。これのへんち(返事)まちておりまする。ねてもねむられません。
注1 烏帽子という村からのお金の催促
注2 お前が戻ってきたら、申しわけができましょう。
注3 隣家の鵜浦栄昌、天台宗の修験者
志(こころざし)を得(え)ざれば再(ふたた)び此地(このち)を踏(ふ)まず
清作(英世)が、満二十歳になる直前に上京する際の、決意の刻 文。生家の床柱に今も残されています。清作は、三城潟から東北本 線本宮駅まで約三十六キロメートルを歩き、そこから東京へ向かいました。
参考文献
- 「目でみる野口英世記念館」1 日本図書センター編・発行
- 「野口博士とその母」 野口英世記念会編・発行
- 「野口英世」馬場正男著 ポプラ社発行
本に関する名言 25
過ぎてゆく時間にしばられないのが、本の生命力だ。
長田 弘『自分の時間へ』より