図書館とレファレンス
図書館は、「知的要求を保障する機関」であり、その任務は「情報の提供」ということになります。
情報提供の一つに「レファレンス」があります。これは、寄せられた質問に対して、図書館職員が資料を駆使し、調査し、回答をするというものですが、図書館においては貸出と並ぶ大きな仕事と言えます。
レファレンスと手がかり
レファレンスでは、「まずはこの資料を!」というものを、質問分野に応じて見つけておくと便利です。
例えば百科事典などは、分野に関係のないオールマイティな「手がかり資料」と言えます。図書館に寄せられる、日常の疑問を中心とした質問の多くは、百科事典で解決、もしくは手がかりをつかむことができます。中でも、小学館発行の『日本大百科全書(全25巻)』は、第1巻目が刊行されてから20年を迎えますが、索引が大変優れており、今でも、図書館のレファレンスツールとしては、必要不可欠な一点と言えます。
自然界の総合データブック
自然科学の分野においては、『理科年表』(丸善)がそれに当たります。
理科年表は、国立天文台編集による、世界的にも類を見ない、自然界を網羅するデータブックです。創刊は大正14年と古く、戦時下で物資の乏しかった昭和19年から21年の3年間を除き、平成16年版まで77冊が発行されています。
こぼれ話①
この当時の日本では、国をあげて科学教育の振興に努めていました。そのため、科学の各分野の基礎となる資料と数値情報を収集し、広く国民に普及させることを目的に、その編纂を東京天文台(現、国立天文台)に依頼したことに始まります。
内容は、「暦部」「天文部」「気象部」「物理/化学部」「地学部」「生物部」の6編から構成され、専門的なデータだけではなく、各地の平均気温や日の出入りの時間、降水量から、主な河川や湖、島、山などの数値データ、地震や気象災害の記録、化学式に単位、過去のノーベル賞受賞者及び受賞理由一覧など、日常生活で「あれって何だった?」と思うような自然科学系のデータも満載されています。自然科学系のデータに関する調べものは、「まずは理科年表」ということになります。
こぼれ話②
理科年表は「南極観測隊」の必需品の一つとなっています。改正された最新のデータが観測に欠かせないためですが、かつての観測船「宗谷」の出航が11月であったため、それに間に合うよう、理科年表は11月に発行するようになりました。
現在の「しらせ」は、11月中旬に出航していますが、間に合わないときには、東京から空輸され、オーストラリアなど、食料補給のための寄港地で積み込まれるとのことです。
現在、理科年表は、CD-ROM版も発行され、画像なども含めた情報検索が便利になった他、データの加工なども行えるようになっています。また、昨年には新たに「環境編」も発刊され、環境データブックとしての性格も強めました。その他、科学入門者のための『理科年表ジュニア』や、理科年表のデータを活用し、読み物としてまとめた「理科年表読本」シリーズは、まさに自然科学を身近なものとしてくれるとともに、レファレンスツールとしての貴重な資料群となっています。
今回は、自然科学系のデータ調査と理科年表について書きましたが、「手がかりの一冊」を持つことは、まさに、ランガナタンの「Save The Time of Reader」につながるのではないでしょうか。
【参考】編集に当たっては、下記のインターネットサイトを参考にさせていただきました
http://pub.maruzen.co.jp/(丸善株式会社)
本に関する名言 23
読書もとより甚だ必要である、ただ一を読んで十を疑い百を考うる事が必要である。
寺田 寅彦(物理学者・随筆家)/『知と疑い』(寺田寅彦全集第5巻)より