雑誌等に掲載していた童話の中から9編を、童話集『三つの虹』(中央公論社 昭和24年刊)として発行している。書名にもなっている「三つの虹」は、貧しい炭焼き小屋の少年・千太の成長と栗鼠のプウとの心の交流を描く佳作である。この作品の中に、妹・冬子の作品としてあるいは千太の通うキットヤ小学校の校歌として、心平の詩が顔をのぞかせる。
実際にも、母校の小川小学校や前橋市立第二中学校などの校歌の作詞をしている。また、「さようなら」という作品では、終戦後の中国から引き上げてくる家族と、飼っていた動物たちとの別れを描いている。
昭和52年には、この9編に「風船はあがりたくありません」と「象のように大きくなったウ吉」を加えた童話集『ばあばらぶう』(筑摩書房)が出版された。
変わったところでは、新潮社の「世界の絵本大型版 16」として『カンガルーの子』(昭和26年)という写真絵本に文を書いている。オーストラリアの写真家が撮った写真に、お話をつけたものである。クンクウとミリーと名付けられた二匹のカンガルーの子が、ブラウン君のもとで育てられ、やがて生まれた森へ帰ろうとするまでの物語である。文章全体がリズムを持ち、まるで詩のようである。
他にも、昭和27年前後の観察絵本『キンダーブック』(フレーベル館)に、詩や短いお話が掲載されている。